2011年02月25日
そのころ住用の学校では
2010年、10月20日(娘の文章)
奄美大島に集中豪雨が襲った。
学校に異変が起こった時の
、中学1年生の授業は、
理科だった。その時は、
学校の裏にある池の水
が溢れ出し、教室での
授業となった。
皆もいつもより落ち着き
がなく、窓の外ばかり
眺めていた。
2時間目の体育の授業
でグランドが浸かって
いることに気付いていた。
1時間の授業、50分間
の間で、高さ20cmは
浸かっただろうか。
確実に水の高さがあがっ
ていることに何か異変を
感じていた。
11時前後だっただろうか。
2年生の生徒が、ベランダ
で声を上げていた。
1年生はすかさずベランダ
に飛び出した。
その時に見た光景はきっと、
一生忘れないだろう。
「空いた口が塞がらない」
とは、この事だ。
校庭に裏山の土砂が、
土石流として一気に
流れ出てきていた。
その流れは一向に収まる
気配を見せなかった。
「すぐに旧校舎の美術室
に移動しなさい。」
先生の言葉を聞いても、
一時は流れが収まらない
土砂から目を離すこと
は出来なかった。
移動した後も窓から
上半身をだして流れ行く
土石流から目を離さなかった。
やっと1年生から3年生まで
が落ち着きを取り戻した時、
ある生徒の一言で先生達の
顔色が変わった。
「先生、先生の車、
動かなくなるんじゃないかな。」
聞き終わると同時に、先生達は
すごい勢いで階段を降り、
校庭へ駆け出した。
先生達の車は、丁度、
水がたまりやすい所に
停めてあった。
その現場を、出来るだけ近く
で見ようとした生徒ら何人かは、
先生達の後を追い、1階に
降りて行った。
正直に言って、私はその時は
楽しかった。勉強してる時より、
非難訓練でもないのに全体で
移動する、生まれて初めて
見るものがある。きっと皆も
そうだったと思う。
心配していた人もいるが、
とにかく見たこともない
世界が広がっていることに
驚くだけだった。
3時間目だったその時は、
美術室か、隣にある音楽室
だけでいるように、という
指示があった。口々に文句
を言い出す男子。教室内を
ウロウロしだす女子。
出張している校長とどうにか
連絡を取ろうとする先生。
私は、どうしようもなく
ただ時間が過ぎるのを
待つだけだった。
どの位時間が経っただろうか。
生徒は落ち着きを取り戻したが、
顔色が変わってきたのは確かだった。
再び美術室に集められた生徒は、
教頭に言われた指示に従った。
「給食をとります。だけど、
ここからは動けません。
先生達が給食の食器を運んで
くるから、残さず食べるように」
その時は、先生の言葉の深い
意味は考えていなかった。
ただ、雨がやみそうにない
ことは、空模様から受け取れた。
給食室から先生方の流れ作業で
給食が運ばれた。
何でこんな所で…みんなが
そう思ったはずだ。でも、
誰も口にしようとはしなかった。
箸が進まない生徒に先生は言った。
「時間掛かってもいいから、
全部食べなさい。・・・今日
一晩中ここにいないと
いけなくなるかも知れないから」
みんなの顔がまた一瞬にして曇った。
食べ終わると、みんな渡り廊下
から、校舎に移動し始めた。
本当は校舎に戻るのは、
御手洗いの時だけ、と
言われていたのだが、ほとんどが
教室に戻って静かに座っていた。
音楽室に戻ってくるように
言われた生徒は、言われた
ままに動いた。みんなが座って、
5分後くらいだろうか。
先生が、ビデオを抱えて音楽室
にきた。それを見て、生徒の顔色
が変わったのを見て、
安堵の声をもらした。
ビデオをつけて20分。
ーパチッー
音楽室の明かりが消えた。
それどころか、テレビも消え
明かりもない。電話も出来ない。
普段の生活がどれだけ平和
なのかがわかった。
やる事がなくなった生徒は、
次々に移動を始めた。
保健室に眠りに行く人。
音楽室でドラムを叩く人。
教室からとってきたノートに
絵を描く人。みんなそれぞれに
行動し始めた。
先生もどうしようもなく
職員室に戻って行った。
「もしかしたら帰れるかも
知れないので、帰る準備
をしてください」
そう言われた時、みんな笑顔になった。
でも、それが本当の事ではない事は、
みんなわかっていた。だからすぐに
その笑顔は消え去った。
空も、一向にその顔色を変えよう
とはしなかった。
雨が降っているからか、時間がすぎて
いくに連れ、どんどん寒さが増してきた。
学校のあちこちから探し出した毛布を、
音楽室に全て集めた。
寒さから、体調を崩す生徒も出てきた。
「ええっと、今日は・・・学校に
泊まる事になりました。
ここから、小学校に移動して、
体育館で、一晩乗り切ろうと思います」
みんな不安の色を隠せなかった。
この時、やっと給食を残さず
食べなさいと言った先生の言葉の
意味が分かった。
小学校の体育館にそれぞれ移動した。
まだ5時を過ぎた辺りなのに
もう暗くなり始めていた。
電気が一向につかず、学校中から
集めてきた『ロウソク』に火を
つけて過ごす事になった。
夕食は、給食のあまりの
ご飯で小さいおにぎりと、
コップいっぱいの味噌汁だけ
だった。そんな少ないご飯なのに
食べる気がなく、箸が進まなかった。
やっと食べ終わっても、何もする事
もなく、寒さで、みんなかたを
寄せ合っていた。
何人かは、トイレに行っていたが、
みんな帰ってきた。
先生達がいる所だけについて
いたロウソクの火は、体育館の
あちこちで灯り始めた。
暗さに慣れてきた生徒達は、
次々に話を始めた。怖い話、
今頃やってるテレビの話。・・・
奄美大島に集中豪雨が襲った。
学校に異変が起こった時の
、中学1年生の授業は、
理科だった。その時は、
学校の裏にある池の水
が溢れ出し、教室での
授業となった。
皆もいつもより落ち着き
がなく、窓の外ばかり
眺めていた。
2時間目の体育の授業
でグランドが浸かって
いることに気付いていた。
1時間の授業、50分間
の間で、高さ20cmは
浸かっただろうか。
確実に水の高さがあがっ
ていることに何か異変を
感じていた。
11時前後だっただろうか。
2年生の生徒が、ベランダ
で声を上げていた。
1年生はすかさずベランダ
に飛び出した。
その時に見た光景はきっと、
一生忘れないだろう。
「空いた口が塞がらない」
とは、この事だ。
校庭に裏山の土砂が、
土石流として一気に
流れ出てきていた。
その流れは一向に収まる
気配を見せなかった。
「すぐに旧校舎の美術室
に移動しなさい。」
先生の言葉を聞いても、
一時は流れが収まらない
土砂から目を離すこと
は出来なかった。
移動した後も窓から
上半身をだして流れ行く
土石流から目を離さなかった。
やっと1年生から3年生まで
が落ち着きを取り戻した時、
ある生徒の一言で先生達の
顔色が変わった。
「先生、先生の車、
動かなくなるんじゃないかな。」
聞き終わると同時に、先生達は
すごい勢いで階段を降り、
校庭へ駆け出した。
先生達の車は、丁度、
水がたまりやすい所に
停めてあった。
その現場を、出来るだけ近く
で見ようとした生徒ら何人かは、
先生達の後を追い、1階に
降りて行った。
正直に言って、私はその時は
楽しかった。勉強してる時より、
非難訓練でもないのに全体で
移動する、生まれて初めて
見るものがある。きっと皆も
そうだったと思う。
心配していた人もいるが、
とにかく見たこともない
世界が広がっていることに
驚くだけだった。
3時間目だったその時は、
美術室か、隣にある音楽室
だけでいるように、という
指示があった。口々に文句
を言い出す男子。教室内を
ウロウロしだす女子。
出張している校長とどうにか
連絡を取ろうとする先生。
私は、どうしようもなく
ただ時間が過ぎるのを
待つだけだった。
どの位時間が経っただろうか。
生徒は落ち着きを取り戻したが、
顔色が変わってきたのは確かだった。
再び美術室に集められた生徒は、
教頭に言われた指示に従った。
「給食をとります。だけど、
ここからは動けません。
先生達が給食の食器を運んで
くるから、残さず食べるように」
その時は、先生の言葉の深い
意味は考えていなかった。
ただ、雨がやみそうにない
ことは、空模様から受け取れた。
給食室から先生方の流れ作業で
給食が運ばれた。
何でこんな所で…みんなが
そう思ったはずだ。でも、
誰も口にしようとはしなかった。
箸が進まない生徒に先生は言った。
「時間掛かってもいいから、
全部食べなさい。・・・今日
一晩中ここにいないと
いけなくなるかも知れないから」
みんなの顔がまた一瞬にして曇った。
食べ終わると、みんな渡り廊下
から、校舎に移動し始めた。
本当は校舎に戻るのは、
御手洗いの時だけ、と
言われていたのだが、ほとんどが
教室に戻って静かに座っていた。
音楽室に戻ってくるように
言われた生徒は、言われた
ままに動いた。みんなが座って、
5分後くらいだろうか。
先生が、ビデオを抱えて音楽室
にきた。それを見て、生徒の顔色
が変わったのを見て、
安堵の声をもらした。
ビデオをつけて20分。
ーパチッー
音楽室の明かりが消えた。
それどころか、テレビも消え
明かりもない。電話も出来ない。
普段の生活がどれだけ平和
なのかがわかった。
やる事がなくなった生徒は、
次々に移動を始めた。
保健室に眠りに行く人。
音楽室でドラムを叩く人。
教室からとってきたノートに
絵を描く人。みんなそれぞれに
行動し始めた。
先生もどうしようもなく
職員室に戻って行った。
「もしかしたら帰れるかも
知れないので、帰る準備
をしてください」
そう言われた時、みんな笑顔になった。
でも、それが本当の事ではない事は、
みんなわかっていた。だからすぐに
その笑顔は消え去った。
空も、一向にその顔色を変えよう
とはしなかった。
雨が降っているからか、時間がすぎて
いくに連れ、どんどん寒さが増してきた。
学校のあちこちから探し出した毛布を、
音楽室に全て集めた。
寒さから、体調を崩す生徒も出てきた。
「ええっと、今日は・・・学校に
泊まる事になりました。
ここから、小学校に移動して、
体育館で、一晩乗り切ろうと思います」
みんな不安の色を隠せなかった。
この時、やっと給食を残さず
食べなさいと言った先生の言葉の
意味が分かった。
小学校の体育館にそれぞれ移動した。
まだ5時を過ぎた辺りなのに
もう暗くなり始めていた。
電気が一向につかず、学校中から
集めてきた『ロウソク』に火を
つけて過ごす事になった。
夕食は、給食のあまりの
ご飯で小さいおにぎりと、
コップいっぱいの味噌汁だけ
だった。そんな少ないご飯なのに
食べる気がなく、箸が進まなかった。
やっと食べ終わっても、何もする事
もなく、寒さで、みんなかたを
寄せ合っていた。
何人かは、トイレに行っていたが、
みんな帰ってきた。
先生達がいる所だけについて
いたロウソクの火は、体育館の
あちこちで灯り始めた。
暗さに慣れてきた生徒達は、
次々に話を始めた。怖い話、
今頃やってるテレビの話。・・・